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<ノート>

孫子は、13篇からなる兵法書。

1.始計篇…兵は詭道なり、臨機応変、見通し
2.作戦篇…「拙速を尊ぶ」、現地調達
3.謀攻篇…戦わずに屈服させる。敵を知り…
4.軍形篇…不敗の準備。攻撃の機を捉える
5.兵勢篇…軍律、勢い、態勢
6.虚実篇…虚実で振り回し主導権を握る。
7.軍争篇…迂直の計、風林火山、NG集
8.九変篇…双方の利害を考えるバランス感覚
9.行軍篇…兆しを捉える。信頼関係の構築
10.地形篇…地形/敵/味方をよく見て、自ら状況を作り出す。
11.九地篇…活用し協力。敵は分断させる。→天地人すべて活用協力。呉越同舟。そして、敵は分断させて総攻撃をかける。
12.火攻篇…感情ではなく目的達成に徹する
13.用間篇…情報を集めるネットワーク構築









孫子の兵法は、戦争の法則性と、戦い方(負けないため、勝つため)の戦略や戦術を追求し、以て「戦いとは何か」を研究したもの。

「兵は詭道なり」とは、単に欺(あざむ)くというのではなく、正攻法奇襲入り混じっての千変万化を臨機応変に応対して、短期で相手を屈服させること。

「欺く」とは、実際と違う様に見せかけて相手に実態を悟らせぬようにして判断を誤らせることや、相手の裏をかき意表をつくこと、相手のペースを撹乱してこちらのペースに巻き込む等、あらゆる奇策が含まれる。
そうして敵の隙を作りだし、その隙を攻めることが「詭道」。

現状に対し、「詭」によって条件を変化させていく臨機応変の策を説く。
だから、「兵家の勝つは、先づ 伝ふ可からず」(言葉にできない)ということになる。

しかし、法則性はある。
それを学び、時・場所・状況・人に応じて千変万化させ、敵に勝ち、以って目的を達する。
より深い仁義のために、勝利という功利を追求することが必須なのだ。

「戦争相手」を、己の心・クライアント・克服すべきこと・障害・勉強や仕事の目標等に置き換えても読める。






◇13. 用間篇

用間の「間」とは間者(スパイ)。つまり、情報活動。

戦争には莫大な費用と、膨大な人数の兵士が必要。戦いが長引けば、その費用も人の数も甚大。たとえ戦争に勝ったとしても、その損失は国家を傾ける。
そして最後の勝敗は1日にして決まる。

この戦争の遂行に際して、事前調査は怠れない。情報収集においても敵に先んじること。
神や経験や数字に頼るのではなく、人を使って生きた情報を集め、分析する。

「而(しか)るに爵禄百金愛(おし)みて敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり」(金銭を惜しみ敵情を視察分析しない者は不仁の至り)

間者の種類は五種類。
間者を敵に知られないように使いこなすことは、君主たる者の「宝」とすべき奥義。

五種類1.郷間…敵国の住民をとり込んで情報収集2.内間…敵国の役人をとり込んで情報収集3.反間…敵の間者をとり込んで、こちらの間者とする(二重スパイ)4.死間…敵国に潜入してニセ情報を流す5.生間…敵国から情報収集して報告する
人選は重要。「間より親しきはなく、賞は間より厚きはなく、事は間より密なるはなし」(最も信頼のおける人物に、最も高い報酬を与え、最も秘密にしておかなければないない)

「聖智にあらざれば間を用うること能わず。仁義にあらざれば間を使う事能わず。微妙にあらざれば間の実を得ること能わず」(人格者であり知恵のある者でなければ間者は使いこなせない。人を慈しむ心を持つ者でないと間者は使いこなせない。
きめ細かく、どんな些細な事柄も情報網から漏らしてしまっては、実際の功績は得られない)
もし、その間者が情報を外に漏らしたならば、間者もその情報を聞いた者も殺さなければならない。

間者を使った具体的な方法
いざ、戦いが始まろうとする時、まずは、敵の指揮官や側近・門番・従者などの名前を入手し、間者を送り込んで、彼らの動静を探らせる。
もし、敵の患者が潜入している事がわかったら、これを手厚くもてなして買収し味方にとり込み、「反間」として、敵国に潜入させる。

この「反間」には、敵国の者をとり込む役目を荷ってもらう。敵の領民をとり込んで「郷間」とし、敵の役人をとり込んで「内間」とする。そうする事で、敵の動静を知る事ができる。
それから「死間」を送り込んで、ニセの情報を流し、「生間」を送り込んで、更なる情報を入手。

最も重要なのは「反間」。だから「反間」には最も良い待遇を与える。
「昔、殷の興(お)こるや、伊撃(いし)、夏に在り。周の興こるや、呂牙(りょが)、殷に在り。故にただ明君賢将のみよく上智を以って間となす者にして、必ず大功をなす」(昔、夏の伊尹(いいん)をとり込んで、夏を倒して殷は起こった。そして、今度は殷の呂尚(りょしょう)ととり込んで、殷を倒して周は起こった。このようにすぐれた君主はすぐれた間者を用いて成功を収めている)

「これ兵の要(かなめ)にして、三軍の恃(たの)もて動く所なり」(情報戦線こそ戦のかなめであり、全軍はこれによって動くのだ)
この最終章「用間篇」が、孫子の中で、最も重要。

情報には当然嘘も含まれる。情報の活かし方は本当に難しく、従って「事前情報は不要」という考えもある。
しかし、戦いは競技ではない。両者共通のルールがあるわけではない。敵を知り己を知らなければ、意表を突かれ、裏をかかれかねない。

戦争は、自国滅亡の危機ともなり、従って絶対に負けてはいけないのだ。君主の国民に対する最も深い仁義は、自国を守り平和と繁栄を築き上げていくことだ。その「仁義」は、「戦争に負けない。戦争に勝つ」という「功利」によって貫徹される。
だから、戦いにおいては、「仁義」よりも「功利」なのだ。

より深い仁義のために、勝利という功利を追求することは必須となる。






◇12. 火攻篇

「孫子曰く、およそ火攻に五あり」(火攻めの種類は五種類ある)…何を焼くか。

1.人員に損害を与える
2.蓄えた兵糧・物資を焼く
3.輸送物資を焼く(補給を絶つ)
4.倉庫を焼く
5.陣形を混乱させる

発火装置などの準備と時期が重要。
その時期は、月が「箕(き・みぼし)」「壁(へき・まめぼし)」「翼(よく・たすきぼし)」「軫(しん・みつうちぼし)」(←いずれも星座の名前)にかかる空気の乾燥した時期。これらの星座が月にかかる時は、統計学上、風が吹き起こる。

「箕」「壁」「翼」「軫」は、古代中国で、天体の位置や動きを知るために考え出された「二十八宿」という天体観測方法に用いられる星座の中の4宿。
まず、天を東西南北の四つの方向の分け、東は蒼龍、西は白虎、南は朱雀、北は玄武の四神(四つの聖獣がそれぞれの方角を守っている)をあてはめ、それぞれの方角をさらに七分割して二十八宿。それぞれの方角にある星座を使って方向を見る。

そして、それぞれの場面に対する臨機応変な攻撃の仕方へと移る。
「およそ火攻は、五火の変に因りてこれに応ず」(火攻めの時の攻撃法に関して「五種類の場面がある)

1.敵陣に火の手があがった時
→外側から素早く攻撃して追い討ちをかける。
2.火の手があがっても敵陣が静まりかえっている時
→そのまま待機して様子を観察し、攻め時を見極め、チャンスが無ければ攻め込まない。
3.敵陣の外側から火を放つ事が可能な時
→間者(スパイ)の放つ火の手を待つ事なく、外側から火を放つ。
4.風上に火の手があがった時
→風下から攻撃してはならない。
5.昼間の風は夜にやむのでその点に注意。
以上の条件に応じて火攻めを活用する。

水攻めについて「火を以って攻を佐(たす)くる者は明なり。水を持って攻を佐する者は強なり」(水攻めは火攻めと同じくらい有効である)

ただし、水攻めの場合は、あくまで敵の補給路を断つ事に専念すべきで、すでに蓄えてある物資に損害を与えることはできない。

指導者の感情的行動の戒め
戦争には目的がある。
「戦勝攻取してその功を修めざるは凶なり」(たとえ戦争に勝っても、その目的を達成できなければ、負けたのと同じである)

根本の目的を見失うことはない。だから、慎重になる。
「利にあらざれは動かず、得にあらざれば用いず、危にあらざれば戦わず」(有利な状況でなければ動かず、必勝の作戦しか用いず、よほどの事が無い限り戦わない)「怒りを以って師を興すべからず。憤(いきどお)りを以って戦いを致すべからず。利に合して動き、利に合せずして止む」(怒りにまかせて軍事行動を起こしてはいけない。有利だと思えば行動し、不利だと見れば撤退する)
「怒りは以って複(ま)た喜ぶべく、憤りは以って複た悦(よろこ)ぶべきも、亡国は以って複た存すべからず、死者は以って複た生くべからず」(怒りやいきどおりは、時が経てばいつか喜びに変わるけれど、亡くした国や死んだ人は、もう戻っては来ないのだ)






◇11. 九地篇

敵味方の置かれている9種類の状況と、それに応じた戦い方。特に捨て身によって全力を発揮する「奥の手」について。

「孫子曰く、兵を用いる法に、散地有り、軽地有り」
・散地…自国の領内にある戦場となる場所。ここでの戦いは避ける。→味方の志を一つにして団結を強める。・軽地…敵地の入り口付近。ここに長居は無用→連携を密接にして素早く進攻する。・争地…そこを獲得すれば有利な場所。敵が先に獲得していれば攻撃してはダメ→敵の背後に回って撃つ。・交地…敵味方の両方が進攻しやすい場所。部隊を孤立させないよう連絡を密に取る。→慎重に守りを固める。・衢地(くち)…数ヶ国と隣接し、そこ押さえれば周囲にも睨みを効かせる事のできる場所。実際の戦闘より外交交渉を重視。→同盟関係を結ぶこと。・重地…敵の真っ只中。必要なものは現地調達を心がける。→食料補給が絶えないように。・圯地(ひち)…道が険しく行軍が難しい場所。速やかに通過する。→自由な行動ができるところに出ること。・囲地(いち)…道が狭く、撤退するには迂回しなければならない不便な場所→自ら退路を断って、決死の覚悟で奇抜な作戦を用いる。・死地(しち)…速やかに戦わなければ生き残れない場所。速やかに戦う→戦う以外活路はないことを示す。

切り崩し作戦を重視。
相手の先鋒と主力部隊を切り離し、上司と部下を切り離し、一丸となって戦えないようにしむける。
しかし、敵が万全の準備をして整然とやってきた時は、「先んずその愛する所を奪わば、則(すなわち)聴かん」(機先を制して敵の急所を押さえる)
何よりも速戦。隙に乗じ、思いもかけぬ道を通り、敵の意表に出ること。「人の及ばざるに」(気づかれないうちに)「虞(はか)らざる道に」(思いもよらない道を)「戒(いまし)めざる所を」(思いもよらぬ方法で)攻撃する。

敵地での戦い方(重地)
必要な物は現地調達。それも、充分なくらい余裕を持って調達。
敵の領内の奥深くに進攻した場合は、兵は一致団結して、普段の力以上のものを発揮するために、兵にはたっぷりと休養をとり、充分に食事をして鋭気を養い、戦力を温存。

敵地の真っ只中であるが故に、勝たねば退路が無い事を悟らせて、窮地に追い込む。
充分に休養をとった後に窮地に追い込まれた兵士たちは、「拘束しなくても団結し、要求しなくても全力を尽くす」。絶体絶命の窮地に立てば、かえって恐怖は消えるもの。

「上手な戦とは、「卒然(そつぜん)」のようなものだ」。卒然とは、蛇の事。その頭を撃てば尾で反撃をし、尾を撃てば頭で反撃して、胴を撃てば首尾ともに襲い掛かってくる。

この蛇のように軍を動かす事ができるか?
「呉人(ごひと)と越人(えつひと)と相悪(にく)むも、その舟を同じくして済(わた)り風に遇うに当たりては、その相救うや左右の手のごとし」(呉と越、敵同士の二つの国の人であっても、同じ舟に乗って嵐に遭遇して、舟が危ないとなれば、お互いが協力して左右の手のように動くはずだ)

これは、単に陣地を同じにしたり、一緒に戦うといった意味ではなく、敵味方一丸となってという事。このように、敵国同士を協力させるためには、政治の力が必要。強者と弱者を協力させるには、地の利が必要だと説く。
思想や政治、地の利をうまく利用すれば、全軍を、あたかも一人の人間のように扱う事ができる。

「兵士に全力を出させるためには死地に追い込んで戦わせる」
「末端の兵に任務の説明をする時は、有利な事だけ教えて、不利な事は内緒にしておく」「命を賭けさせるためには、法外な恩賞も必要だし、無謀な命令を下す事も必要」

「地形篇」では、「卒を視(み)ること嬰児(えいじ)の如し。卒を視ること愛子の如し」(赤ちゃんのように、わが子のように愛さなければ、兵士は将と生死をともにしようとは思わない)と言いながら、ここでは、「わざと退路を断てば、誰もが死ぬ気で戦う」と説く。
敵に対しては、「囲む時は逃げ道を作っておいて窮地に追い込むような事はするな(軍争篇)」と、敵を必死にさせないための方法を説いているから、必死にさせるためにはその反対で、「退路を断って窮地に追い込む」

敵地での作戦の集大成。
敵地で戦う時は、まず関所を封鎖し、敵の連絡網を断ち、すみやかに軍儀して、敵が最も重視している部分を見極め、決定したら行動を開始。
最初は、わざと敵の思うツボにはまったように見せかけて、隠密裏に、静に、そして、チャンスと見てとれば、先ほど見極めた敵の一点に兵力を集中して、先制攻撃をかける。

「始めは処女のごとくにして、敵人、戸を開き、後には脱兎(だっと)のごとくして、敵、臥(ふせ)ぐに及ばず」(始めは処女のように振舞って敵を油断させ、その後逃げるウサギのようにすばやく激しい攻撃を仕掛ければ、敵は防げない)






◇10.地形篇

地形(状況・場合)。敗北の原因、将の責任と役割。

地の利を得るためには、地形を知らなければならない。
6種類の地形。「地形には、通なる者有り、挂なる者有り、支なる者有り、縊なる者有り、険なる者有り、遠なる者有り」

1.通(つう)…敵からも味方からも、行き来しやすい地形。ここでは、敵より先に着いて南を向いた高地に布陣し、補給路を確保して戦えば有利。↔陣の敷き方で対処。
2.挂(かい)…進攻しやすいが、撤退し難い地形。ここでは、敵の守りが薄ければ有利、守りが強固であれば戦わない方がよい。↔計画を持って油断させ、不意に攻め入ることで対処。3.支(し)…敵にも味方にも不利な地形。ここでは、敵が誘いをかけて来てもそれには乗らず、一旦退却し、敵を誘い出してから攻撃を仕掛ける。↔本国等の他の大切な場所を攻め、敵が占めている地の利を自ら手離すよう仕向ける。
4.縊(あい)…くびれた地形。狭い場所。ここでは、先に入り口を固めてから敵を待つ。もし、敵が先に来て、すでに入り口を固めていたらすみやかに撤退、まだ入り口を固めていなかったら攻撃する。↔本国等の他の大切な場所を攻め、敵が占めている地の利を自ら手離すよう仕向ける。5.険(けん)…けわしい地形。ここでは、敵より先に到着し南を向いた高地に布陣して敵を待つ。もし、先に敵が到着していたなら撤退する。↔本国等の他の大切な場所を攻め、敵が占めている地の利を自ら手離すよう仕向ける。6.遠(えん)…地元から遠い場所。ここでは、相手の勢力が均等であれば、はるばる出て行った方が不利なので戦わない。↔おとりを使って敵を引き寄せることで対処。

それぞれの地形に備わっている勝利の道を掴むことが、将の重要な任務。無限の奇変を出す。
負け戦になる六つの状況「故に兵には、走なる者有り、弛なる者あり、陥なる者あり、崩なる者有り、乱なる者あり、北なる者あり。およそこの六者は、天の災(わざわい)にあらず、将の過ちなり」

1.走(そう)…兵力は同程度なのに、味方1の力で敵の10の力と戦わなければならなくなった時。2.弛(し)…兵が強いのに、軍の幹部が弱い時。3.陥(かん)…軍の幹部が強いのに兵が弱い時。4.崩(ほう)…トップが幹部の能力を認めず、幹部はトップの命令に従わず勝手に戦う時。5.乱(らん)…将が気が弱く厳しさを欠き、指導方針も不明確で部下は動揺し、規則も徹底せず、兵を統率できない時。6.北(ほく)…トップが敵の情報を知らず、こちらが劣勢なのに優勢な敵と戦えと命令し、向かう先を見失っている時。

これらは偶然ではなく、君主や将軍が自ら引き起こしている状況。こうならないようにするのが、将の重責。
「戦道必ず勝たば、主は戦うなかれと曰(い)うとも必ず戦いて可なり」(勝てる見通しがあるなら、君主が反対しても戦うべきである)
また、勝てる見込みがないのであれば、君主が戦えと命令しても戦うべきではない。

「地形は兵の助けなり」先ほどの六つの地形、六つの状況は、勝利への助けとなる物。地形を知り、状況を判断し、君主に反対してでもやる時はやる。その結果、功績を挙げても名誉を求めず、失敗しても責任から逃れようとしない。「ただ人をこれ保ちて而して利、主に合うは、国の宝なり」(ただ、人々の安全を願い、君主の利益のために働く、これこそ国の宝である)

部下の扱い方
「卒を視(み)ること嬰児(えいじ)の如し。卒を視ること愛子の如し」(赤ちゃんのように。わが子のように)
そうやってこそ、兵士は、将軍と生死をともにしようと思うようになる。
かと言って、可愛がってばかりで命令せず、規則に違反しても罰則をあたえないようであれば、わがまま息子(娘)に育ち、用をなさないようになる。

味方の兵士の事を知り尽くしていても、敵の強さを知らなければ勝敗は五分と五分。敵の強さを知っていても、味方の兵士の事を知らなければ、やはり勝敗は五分と五分。さらに、敵の事も味方の事も充分知り尽くしていても、先ほどの地形の事を把握して、地の利を生かす事ができなければ、やっぱり勝敗は五分と五分。

敵・味方・地形を知っていれば、「動いて迷わず、挙げて窮せず」(事を起こしてから迷う事は無いし、挙兵してから窮地に立たされる事もない)と言う。

「彼を知り、己を知れば、勝、乃(すなわ)ち殆(あや)うからず。天を知りて地を知れば、勝、乃ち窮(きわ)まらず」(敵と味方を把握し、時を待って地の利を活かせば、必ず勝つ)






◇9. 行軍篇

軍を戦場に進める場合の基本と、現象によりその本質を見破る観察法について。
「山を絶(こ)ゆれば谷に依たり、生を視して高きに処(お)り、隆(たか)きに戦いて登ることなかれ。これ山に処る軍なり」(山で戦う時は、谷に沿って移動し、視界の開けた高い所に陣を敷く事。もし敵が先にそのような場所にいる場合は、こっちから攻撃してはならない)
川を渡る時はすみやかに渡り、渡り終えたら水から遠ざかる事。河岸では足場が悪い。敵が川を渡ってくる時は水の中で迎え撃たず、半分が渡り終えてから攻撃を仕掛けるが、水際で戦ってはならない。陣を敷く時は、視界の開けた高所を選び、川下から川上にいる敵を攻撃してはいけない。
そして、湿地帯での戦いは避ける事。どうしても戦う時は、水草の茂みを選び樹木を背にして戦う。
少しでも有利なように工夫する。

さらに「軍は高きを好みて下(ひく)きを悪(にく)み、陽を貴(たっと)びて陰を賤(いや)しむ。生を養いて実に処(お)り、軍に百疾なし」(陣を敷くなら、低地を避け高地に、そして日当たりの良い場所を選び日陰を避ける。そうしておけば健康管理に役立ち、気力も充実し病気にならない)

常に敵の行動が見えやすい優位な位置にいなければならない事、不利な条件では戦わない事、兵士の健康面にも注意を払う事。

心理学の「快感原則」と一致する。
人間は暗い所より明るい所、陰気な所より陽気な所に向かうのが通常。
プラスの誘意性に向かい、マイナスの誘意性を避けようとする心理を、戦闘においても活用する。

近づいてはいけない場所六つ。1.絶澗(ぜっかん):前後が険阻で、真ん中に水が流れている所。2.天井(てんせい):四方が切り立った窪地。3.天牢(てんろう):三方が険阻で、狭い道が一方にだけ通じている所。4.天羅(てんら):草木が密集し味方同士も連絡が取れなくなる場所。5.天陥(てんかん):湿地帯。低く落ち込んだ所。6.天隙(てんげき):でこぼこした場所。

このような場所には絶対に近づかず、逆に敵をこのような場所に誘い込む。

また、自陣の近くに険阻な地形、溜池や穴、葦草の茂っている所、林、草むらなどがあれば、敵の伏兵がいると見て、慎重に探索しなければならない。

これらの事を実現するためには、その場所の地理に精通していなければならず、敵の行動を把握していなければならない。

次に心理戦。敵の動静を察知する方法「敵近くして静かなるは、その険を恃(たの)べばなり。遠くして戦いを挑むは、人の進むを欲するなり。その居る所の易(い)なるは、利なればなり」(敵が近くなのに攻めて来ないのはそこが攻め難い場所であり、何か期する所があるから。遠くにいるのに挑発してくるのは、こちらを誘い出そうとしているから。敵がそこにいるのは、そこが有利な場所だから)

さらに、木々が動くのは敵襲の兆し、鳥が飛び立つのは兵が潜伏しているから、土ぼこりが低く舞うのは歩兵が進攻してきたから、土ぼこりが少ない量で移動しながら舞うには宿営をするから、草むらに仕掛けがあるのは、こちらに疑いを持たせて進ませまいとしている。

要するに、物事には要因がある事を考えなければいけない。兆しを捉える智。
心理戦はさらに、「辞卑(ひく)くして備えを益すは、進むなり。辞彊(つよ)くして進駆(しんく)するは、退くなり。軽車先ず出(い)でてその側に居るは、陣するなり。約なくして和を請うは、謀るなり。奔走して兵車を陳(つら)ぬるは、期するなり。半進半退するは、誘うなり」(敵が謙遜しながらも準備を整えている時は進攻してくる。逆に強気を全面に押し出して今にも進攻するように見せる時は撤退の準備をしている。戦車を出し、その傍に人がいる時は、陣を定めようとしている。対峙している時に突然和睦を申し込んで来た時は何か謀略を企てている。敵が慌てて戦車を並べだしたら決戦を考えている。敵が勝敗に関係なく一進一退を繰り返すのは、誘いをかけている時である)

敵の内情を判断する
「幹部がやたら部下に怒鳴り散らす時は疲れている」「水汲みに行って自分が真っ先にに飲むのは水不足」「やたら賞金や勲章を連発するのは行き詰まり、やたら罰するのも行き詰まり」「部下に散々怒鳴り散らしておいて後で嫌われるのを気にするとはバカをさらけ出してるようなもの」等と続く。

要因と兆しを探るという事が重要。

「卒、いまだ親附(しんぷ)せざるに而(しか)もこれを罰すれば、則(すなわ)ち服せず。服せざれば則ち用い難きなり。卒、すでに親附せるに而も罰行なわざれば、則ち用うべからざるなり」(部下と親密になっていないのに、罰則ばかり厳しくすれば、部下は心を開かない。心を開かなければ扱い難い。逆に親密になったからと言って違反しても罰しないでいると、これまたよろしくない)

「故にこれに令するに文(ぶん)を以ってし、これら斉(ととの)うるに武(ぶ)を以ってす」(だから、規則違反に関して、温情をもって教育し、威厳をもって統制をとる)
「令、素(もと)より行なわれて、以ってその民を教うれば、則ち民服す。令、素より行なわれずして、以ってその民を教うれば、則ち民服せず。令、素より行なわるる者は、衆と相得るなり」(平素からしっかり教育すれば部下は命令に従うし、そうでなければ当然従わない)
敵情視察も同時進行し、兵士との信頼関係を築きあげ、一致団結・結束を固めれば、兵の数の多い少ないはたいした問題ではない。

まとめ
1.人数より一致団結しているか
2.罰は一定の条件を前提に考える
3.仁と威の両面が必要
4.平素から正しい管理が行われていなければ、いざという時役に立たない






◇8. 九変篇

オモテがあればウラがある。陰があれば陽がある。その変化と発展の法則を見極める。

「将、九変の利に通ずれば、兵を用うるを知る。将、九変の利に通ぜざれば、地形を知るといえども、地の利を得ること能(あた)わず」(九変の効果を知っている将軍だけが、軍を率いる資格がある。九変を駆使できなければその土地を知っていても地の利を得る事はできない)

九変とは、「その時々に応じて形を変える」という臨機応変のこと。原則を充分に心得ておいて、臨機応変に応用する事。

「九変篇」で説かれる原則は、「圮(ひ)地には舎(やど)ることなく、衢(く)地には交わり合し、絶(ぜつ)地には留(とど)まることなく、囲(い)地には則ち謀り、死地には則ち戦う」(圮地=行軍のし難い場所”には駐屯せず、衢地=諸外国の勢力がうまく保たれている場所”では外交交渉を充実させ、絶地=敵の領内真っ只中”には長く留まらず、囲地=囲まれたら”策略を使って脱出を図り、死地=危機”ならば戦うのみ)
「塗(みち)に由(ゆ)ざらる所あり。軍に撃たざる所あり。城に攻めざる所あり。地に争わざる所あり。君に受けざる所あり」(道には行ってはいけない道もある。敵には攻撃してはいけない敵もある。城には攻めてはいけない城もある。土地には奪ってはならない土地もある。君主の命令には従ってはいけない命令もある)

また、多面的に考える事も重要。「智者の慮は必ず利害に雑(まじ)う」(デキル人は必ず利と害の両方を考える)

利益を考える時にはそれに伴う損失の事も考え、逆に損失した時はそれによる利益も考える。
諸葛孔明も「成功したいなら失敗の事も考えろ」と説く。
自分のところばかりではなく、敵を降伏させるためには損害を与え、味方に抱き込むためには利益与える。自分の利害とともに敵の利害も考えておかなくては勝てない。
「その来たらざるを恃(たの)むることなく、吾の以って待つ有ることを恃むるなり」(敵が攻撃してこない事を願うのではなく、敵がしてこないようにコチラ側が仕向ける)

智者が方策を練る場合、必ずアメとムチを使い分ける。アメで誘って目的を達し、ムチを与えれば災いを未然に防ぐ。

将軍が陥りやすい過ち…「五危(ごき)」「将に五危有り。必死は殺さるべきなり。必生は虜(とりこ)にさるべきなり。忿速(ふんそく)は侮(あなど)らるべきものなり。廉潔(れんけつ)は辱(はずか)しめらるべきなり。愛民は煩(わずら)わさるべきなり」(将軍には5つの危険がある。必死になり過ぎる者は殺される。何が何でも助かろうとする者は捕虜になる。短気な者は軽視される。まじめで潔癖な者は策にハメられる。民衆の事を思いやり過ぎると精神的に参ってしまう)

一面に囚われ過ぎると危険。物事には反作用がある。
何事もバランス感覚が大事。「まじめ」なのは結構だが、「くそまじめ」では困る。






◇7. 軍争篇

戦闘の心得。戦闘において勝利と敗北は紙一重。正奇の組み合わせと静動の運用により、合理的勝利を掴む。

「迂直の計」。自然法則の観察から生まれた。「縮めたければ、まず伸ばしてやる。弱めたければ、まず強めてやる。奪いたければ、まず与えてやる」。「迂(う)を以って直となし、患を以って利となすにあり」(回り道をしながら直進し、損をしながら得をする)

迂回したかと見せて直進したり、奇襲をかけたかと思えば正攻法で攻める。陰と陽、静と動。騙しながら戦いを有利に導く。
一見こちらが損に思える事は、敵にとっては有利に思える事なので、そこに食いついてきやすい。その裏をかく。もちろん、相手の事を十分調べておく。敵国の謀(はかりごと)を知らずに兵を動かすのは危険。敵の国の地理を知らなければ、そこへ自軍を向かわせる事はできない。
「故に兵は、詐(さ)を以って立ち、利を以って動き、分合を以って変をなす者なりれ(戦いは、敵をあざむく事で始まり、有利な方向へ動き、兵の分散と集中を繰り返しながら変化する)
戦術の根本は、敵をあざむくこと。
行動の決定は、敵を欺くことによって作り出された有利な状況の中で行われる。
その行動は分散集中変幻自在でなければならない。
「故に、其の疾(はや)きことは風の如く、其の徐(しず)かなることは林の如く、侵掠(しんりゃく)することは火の如く、動かざることは山の如く、知り難きことは陰(かげ)の如く、動くことは雷霆(らいてい)の如し。
郷を掠(かす)むるには衆を分かち、地を廓(ひろ)むるには利を分かち、権を懸(か)けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ。此れ軍争の法なり」
(疾風のように早いかと思えば、林のように静まりかえる、燃える炎のように攻撃するかと思えば、山のように動かない、暗闇にかくれたかと思えば、雷のように現れる。兵士を分散して村を襲い、守りを固めて領地を増やし、的確な状況判断のもとに行動する。
敵より先に「迂直の計」を使えば勝つ。これが、勝利への道だ)

戦闘とは、敵の村落を襲撃して人的資源を奪い、敵地を占領して物的資源を奪う。

ただし、いくら「疾きこと、風の如く」でも、ただ単に急いではダメ。「百里にして利を争えば、則ち三将軍を擒(とりこ)にせらる」(百里の遠征をして勝ちを急げば、全員が捕虜になってしまう)
勝ちを急ぐばかりに、昼夜を問わず行軍したりすれば、当然集団の統率は取れない。重装備のまま全軍で進めば遅くなり、かと言って軽装備で行けば装備を運ぶ輸送集団が遅れる。
軍隊が分散されると、それだけ少ない兵で戦わなければならない。遠征をする時は、その危険を充分考慮して移動しなければならない。

「衆の耳目を一つにする」
夜はかがり火と太鼓を増やし、昼間は旗を用いて兵士の指揮をとって大軍をまとめる。兵士の目と耳に働きかけ、お互いの連絡を密にして、組織としての力を発揮させる。

敵を制御する四つのポイント
1.気(士気)
「その鋭気を避けてその情気を撃つ」
敵のリズムを読み取り(敵の元気のある時を避け、士気が下がった所を見計らって撃って出る)
2.心(心理)
「治を以って乱れを待ち、静を以って譁(か)(軽はずみに来る)を待つ」(態勢を整えて、静かに敵の乱れを待つ)
3.力(戦力)
「近きを以って遠きを待ち、佚(いつ)を以って労を待ち、飽を以って鐖(き)を待つ」
(有利な場所に陣取って敵を待ち、コチラは休息をとって敵の疲れを待ち、食事して相手が飢えるのを待つ)
4.変(変化)
「正正の旗を邀(むか)うることなく、堂堂の陣を撃つことなし」(充分な自信と準備をもって攻撃してくる敵に対しては、正面衝突することなく、奇策を用いて意表をつく)

上の3つ「気・心・力」はいずれも敵の乱れや弱点を突くということ。勝算がなければ戦わない事、それは逃げる事ではなく「変化」するという事。

戦闘に際しての八つの「べからず集」。1.「高陵には向かうことなかれ」(高い場所の敵を攻撃してはダメ)2.「丘を背にするは逆(むか)うことなかれ」(丘を背にした敵を攻撃してはダメ」3.「佯(いつわ)り北(に)ぐるには従うことなかれ」(わざと逃げる敵を追ってはダメ)4.「鋭卒には攻むることなかれ」(ヤル気満々のヤツを攻撃してはダメ)5.餌兵には喰らうことなかれ」(餌に飛びついてはダメ)6.「帰師(きし)には遏(とど)むることなかれ」(帰ろうとする敵を止めてはダメ)7.「囲師(いし)には必ず闕(か)き」(囲む時は逃げ道を作っておく)8.「窮寇(きゅうこう)には迫ることなかれ」(窮地に追い込んだ敵になお迫ってはいけない)






◇6. 虚実篇

一つ前の「兵勢篇」の、集団で力を発揮するための4つ目の条件「虚実」について。
実で虚を攻め、力ずくでなく優位に立つ。相手の油断、欲望、弱点を利用する。

「孫子曰く、およそ先に戦地に処(お)りて敵を待つ者は佚(いつ)し、後れて戦地の処りて戦いに趨(おもむ)く者は、労す。故に善く戦う者は、人を致して人に致されず」(敵より先に戦場に行き、敵を迎え撃てば余裕を持って戦える。逆に遅れて行けば、戦いは苦しくなる。だから、名将は人を致して人に致されず)

「人を致して人に致されず」とは、「相手に左右されず自分が相手を左右する立場に立つ」、つまり主導権を握る。

どうやって主導権を握るのか?
敵にある行動を起こさせるためには「そうすれば有利だ」と思わせる。逆に、行動を起こさせたくなければ「そうすれば不利になる」と思わせる。

敵の準備が万全で余裕がありそうなら策略を張りめぐらせてかき乱し、食糧が充分なら道を断って飢えさせる。
そして、自分たちは「その趨(おもむ)かざる所に出(い)で、その意(おも)わざるところに趨く」(敵がすぐに行けないような場所に進撃し、敵が思いつかない方向へ攻撃する)ことで主導権を握る。

敵のいない場所であるなら、長い距離を行軍しても疲れないし、敵の守っていない場所なら攻撃して落とせる。逆に、相手が攻撃しない場所なら守備についた時、必ず守れる。
この戦法を巧みに操れば、相手はどこを守ってよいかわからなくなり、どこを攻撃してよいか混乱する。

そうなると、自軍は、「微なるかな微なるかな、無形に至る。神なるかな神なるかな、無声に至る」(姿は見えず、音は聞こえない)と主導権を握れる。
受動的な立場に追い込まれると、行動の自由を失う。
実情に合わない悲観的評価や楽観的評価、そこから生じる消極的処置や冒険的処置は、主導権を失わせ、悲観論者と同じ道に陥る。

受動的立場を脱して主導権を回復するには、「逃げること」が必要。また、敵の力が最高潮に高まり、自軍の困難が極度に達したときこそ、敵に不利、我に有利な情勢が始まるとき。
「より一層頑張る」ことで、有利な情勢と主導権を回復することはよくある。

相手から見れば自軍がどう動くかわからないように仕向けておけば、相手の戦力を分散させることができる。

守らなければならない場所が10ヶ所あったとしたら、兵を10に分けて守る事になる。その相手の1ヶ所に、こちらの戦力を10使える。「これを十を以ってその一を攻むるなり」(10の戦力で1を攻撃するという事になる)その場所に関しては相手の10倍の戦力で攻撃できる事になる。

兵力の多少は絶対的なものではなく、敵味方の態勢いかんにかかっている。
何か一つ相手に勝る物に戦力のすべてを賭けて勝負する事で、勝機を見出す。
どんなに強大な相手でも必ず守りが薄い場所があり、つけ込む隙はある。

「ここが狙い目」という「時と場所」を定める事ができたなら、たとえどんなに遠くまで遠征しても勝てるし、それを見抜けなかったら戦力が分散され、お互いに協力し合う事もできないようになる。
「兵多しといえども、また奚(なん)ぞ勝敗に益せんや…勝は為すべきものなり。敵衆(おおし)といえども、闘うことなからむべし」(兵の数がいかに多かろうと、勝敗を決定する要因にはならない。勝利は人が造る物である。(なぜなら)敵の数がいかに多くても、(こちらの作戦によって)それを戦えないようにする事ができるからである)

「人を形せしむ」。相手を固定させること。固定は死滅を意味する。相手を固定させることにより、その発展を止める。

主導権を握ったら、今度はコチラの態勢。
「兵を形するの極は、無形に至る…その戦い勝つや複(ふたた)びせずして、形に無窮に応ず」(究極の戦の形は無形である…コチラの戦闘態勢は相手の態勢によって無限に変化する)

人は、勝利を収めた時のやり方がベストだと思いがちだが、次に戦う時もベストかどうかは分からない。

勝利に至る態勢を見つけ出すには、1.戦況を分析し、彼我どちらが有利かを見極める。2.敵に誘いをかけて直ちに行動に出るか、相手の出方を観察する。3.敵の態勢を固定化させ、急所を見極める。4.小競り合いを試みて、敵陣の強味と弱味を探る。
この結果によって態勢を判断する。こちらの態勢は常に流動的で固定化しないこと。

相手の態勢に応じた自由自在の変化によって勝利を掴める、いつでも再構築できる柔軟な態勢こそが理想。
態勢は水が流れるように変化させなければならない…低い方へ低い方へ流れていくように。「実を避けて虚を撃つ…兵に常勢なく、水に常形なし」(充実した部分を避けて守りの薄い所を攻撃する。水に一定の形がないように、戦い方にも決まった形はない)

老子も「上善水のごとし」と説く。何事にも臨機応変にその時々で形を変えるのが得策。

組織は一度形成されると、その目的を離れ、組織自身を維持するための動きをはじめる。組織を形骸化させないためには、無組織の組織こそ理想的。






◇5. 兵勢篇

戦いは個人ではなく、集団で力を発揮させる事が重要である。そしてそこに「勢」をプラスする。
静を動に、形を勢を転化させるにはどうすれば良いか?

兵の人数が多くなれば、それだけ戦力が増すが、たとえ大軍団になっても、それが小部隊を指揮するような統制がとれていなければ、力は発揮できない。

集団で力を発揮させるために必要な四つの条件(組織と戦術)。1.分数…軍の組織・編成
→大部隊を少人数のように管理するには、幾つかの部隊に分けること。2.形名…軍の指揮系統
→大部隊を少人数のように戦わせるには、指揮系統を確立すること。3.奇正…千変万化の戦術
→絶対不敗の優位を保つのは、変幻自在の戦術があればこそ。4.虚実…必ず勝つという戦闘の要諦
→充実した戦力(実)で、相手の手薄な所(虚)を撃つこと。

指揮命令系統(軍令)の確立には、軍律(軍内の法律)が整い、手柄に対しては賞賛し、規律を乱したら処罰する、公正な賞罰が行われている事が必要。
奇正
実をもって虚に勝つのが、戦争の常道(正)。この正は、個々の場面に応じた縦横の戦術(奇)となって現れなければならない。
約2千年前の「孫臏(そんびん)兵法」という兵法書には、「形で形を制するのが正、無形で形を制するのが奇」とある。
孫子では「およそ戦いは、正を以って合し、奇を以って勝つ」(対峙する時は正攻法で、勝つ時は奇襲で)と説く。
「五色は五に過ぎざるも、五色の変は、勝げて観(み)るべかざる…戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正の変は、勝げて窮むべかざる…」(色の原則は、赤・青・黄・白・黒の五色だが、その組み合わせで無限に色が作れるように、戦いの原則は奇と正の二つであるがその組み合わせによる変化は無限である)
「勢いに乗る」事の重要性。
「善く戦う者は、その勢いは険にして、その節は短なり」(良い戦い方とは、勢いに乗じて一瞬で力を発揮する)
E=mc2
ある物体が運動することによって生ずる運動エネルギーの大きさは、その物体の質量とその物体の速度の二乗に比例する。

せき止められていた水が開放された時、怒涛のごとく流れて行くが如し。
引き絞った弓の弾力が(勢)、一気に放たれた瞬間が(撃破力)。

「乱は治に生じ、怯(きょう)は勇に生じ、弱は彊(きょう)に生ず。治乱は数なり。勇怯は勢なり。彊弱は形なり」
戦闘の経過は常に入り乱れる。治もたやすく乱に変わり、勇もたやすく怯に変わり、強もたやすく弱に変わりうる。
治乱を左右するのは統制力いかん。
勇怯を左右するのは勢いのいかん。
強弱を左右するのは撃破力のいかん。
「善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責めず」(兵士一人一人の行動に期待するのではなく、勢いに乗る事を重視する)
→兵を勢いに乗せて戦わせる。「これに形すれば、敵必ずこれに従い、これに予(あた)うれば、敵必ずこれを取る」(こうすれば敵は必ず動き、それをちらつかせば、必ず食いついて来る)
相手が食いつきような餌をばら撒いておいて
「利を以ってこれを動かし、卒を以ってこれを待つ」(相手が進んで行動するような状況を作り出し、敵をこちらの思うように動かしておいて、主力部隊を繰り出して一気に波に乗る機会を待つ)
事前に情報収集を行い、どんな餌に食いついて来るのかを見極める。

混乱を避けるために「分数」と「形名」を確立し、「奇正」を繰り出して勢いをつける。
「虚実」は次の「虚実篇」で。






◇4.軍形篇

※相手に乗じる隙を与えず(防御・負けない)、相手を撹乱し(変化)、相手の隙を生み出して討ちのめす(攻撃・勝つ)。

水のように相手に応じる。無形。

※形は、何らかの作用をもたらすためのもの。千変万化に応じて、形・システムに乗せて、次へ渡すこともある。
「勝は知るべくして、なすべからず」(勝つ事を予想する事はできるが、必ず勝つとは限らない)→では、必ず負けないようにする事は可能か?
万全の態勢で守りを固める事。「守り」とは、国防だけではない。政治・経済・治安・教育・医療がしっかりしていること。
そして、「先ず勝つべかざるをなして、以って敵の勝つべきを待つ」(先に守りを固めておいて、敵のくずれを待つ)
機…いつ攻めるのかという判断が勝利への鍵。相手の態勢が崩れる時、スキを見せる時が、攻撃を仕掛けるタイミング(機)。
「九地の下に蔵(かく)れ、九天の上に動く」(守りについた時は身を隠し、攻撃する時はすかさず動く)

自軍が負ける原因はこちらの不備にあり、勝つ原因は相手の不備にある。

軍事力…戦争の勝敗を決める五要素。
「兵法は、一に曰く度(たく)、二に曰く量、三に曰く数、四に曰く称、五に曰く勝」(度とは、国土の広さ。量とは、資源の量。数とは、人の数の事。称とは、戦力。戦力は勝敗を決める)

1.国土の広さ→2.資源の量→3.人口の多さ→4.軍事力(戦力)→5.勝敗を決める。
国の経済や治安がしっかりしている事、そのためには国を治める君主がしっかりしている事を重要視する。

「勝兵は先ず勝ちて而(しか)る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む」(勝つ者は、先に勝ってから戦い、負ける者は戦ってから勝つ方法を模索する)
勝敗は戦う前に決まる。
だから、「善く戦う者は勝ち易(やす)きに勝つ者なり。故に善く戦う者は勝つや、智名なし、勇攻なし」(名将は、勝ちやすい者に勝つ。だから名将は勝ったとしても、その名を知られる事はないし、賞賛もされない)

名将は「事前にしっかりと準備を整え、勝てると思える戦いに、無理なく自然に勝つ」。だから、それが当然の事であって、あえて人々から賞賛される事はない。

当たり前に勝利をモノにするのが名将。
それは、事前の確かな準備と、総合的な判断力をもって成す。

戦上手は、満々とたたえた水を深い谷底に一気に落とすように、蓄積された力で敵を圧倒する。態勢を整える(軍形)とはこのこと。






◇3.謀攻篇

戦争は目的ではなく手段。よって、戦わずに勝つのが最高の勝ち方。それが謀攻。
理想は、相手を傷めずに屈服させること。相手の意図を見抜いて、これを封じる知略に基づく。
「およそ兵を用うる法は、国を全うするを上となし国を破るはこれに次ぐ…この故に、百戦百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」(戦争というのは、相手を傷つけないで降伏させるのが上策。相手をやっつけて降伏させるのは次善の策…。だから、百回戦って百回勝っても、それは最善ではない。武力に訴えることなく敵軍を降伏させることが最善である)

なるべく相手を傷つけずに武力に訴えずに屈服させる。しかし、戦う以上は負けない。理想の戦い方とは、「故に上兵は謀を伐(う)つ、その次は交を伐つ、その次は兵を伐つ、その次は城を攻む、城を攻むるの法は、巳(や)むを得さるがためなり」(だから、最高の戦い方は戦いが始まる前に相手の意図を見破って事前にこれを封じること、次に敵の同盟関係を断って孤立させる事、その次が戦う事、その次が城を攻める事、城を攻めるのは、仕方が無い時にやる最終手段である)

形や物より、機能や目的を重視する。
形や物への囚われを脱し、その機能を最適に課すための手段を追求することで、新たな展開へ導く。

城攻めをするには、その武器の準備だけで3ヶ月はかかり、兵士が身を隠す土塁を築くのにもさらに3ヶ月を要する上に、無能な将軍が怒りにまかせて、餌にアリが群がるように兵士に城攻めをさせたなら、兵士の3分の1を失ってもなお、城は落とせないだろう。

戦い方の原則「十なれば、則(すなわ)ちこれを囲み、五なれば、則ちこれを攻め、倍すれば、則ちこれを分かち、敵すれば、則ちよくこれと戦い、少なければ、則ちこれを逃れ若(し)からざれば、則ちこれを避く」((自分の兵力が相手の)10倍あれば囲み5倍なら攻撃をし、2倍なら、分断して、互角なら頑張って戦い、劣勢だと見たら退却し、勝算がなければ戦わない)

退却の時の判断ほどリーダーの資質を問われることはない。
「逃げる」のは、敗北ではなく、「次に勝利するための準備で、積極的な作戦である」
「人の兵を屈するも、戦うにあらざるなり。人の城を抜くも、攻むるにあらざるなり。人の国を毀(やぶ)るも、久しきにあらざるなり。必ず全(まつた)きを以って天下に争う」(戦わずして勝ち、攻撃せずに城を落とし、長期戦に持ち込む事なく、無傷のまま天下を取る)
これが、勝ち方。
ただ、いくら将軍が優秀でも、君主との関係がうまくいってなければ敗北を喫する。
君主と将軍、司令官と参謀、最高責任者と現場責任者。トップと補佐役の関係はとても重要。どこまでの権限を与え、どこまでの責任を取らせるか。

君主はその将軍が優秀かどうかをあらかじめ判断し、委任したからには、個々の作戦に口出ししない。

君主が口出しして危機に陥れる場合
1.進むべきでないのに進軍を命じ、退くべきでないのに退却を命ずる場合。
→軍の行動範囲を狭める。
2.軍の内部事情もわきまえずに、口をはさむ場合。
→軍内部に混乱を招く。
3.指揮系統を無視して軍令に干渉する場合
→不信感を生む。
これらは全て自滅行為である。
そして、勝利を収める5つの条件。
1.敵と自分の戦力を比べ、戦うべきかどうかの判断ができること。
2.その兵力に応じた戦い方ができること。
3.君主とその配下が同じ目標を持っていること。
4.こちらは準備万端整え、相手の不備につけ込むこと。
5.将軍が有能で、君主が軍事に干渉しないこと。

つまり、「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」(敵を知り、自分を知っていれば百戦しても負けない)「敵を知らず自分を知っていれば戦いは五分五分、敵を知らず自分の事も知らなければ、いつも危ない橋を渡ることになる」。






◇ 2. 作戦篇

万全の準備、短期決戦、集中と分散。最小の犠牲で最大の効果を狙う。
戦争全般に関する方向性・心がけを説く。

「およそ兵を用うるの法は、馳車千駟(ちしゃせんし)、革車千乗(かくしゃせんじょう)、帯甲(たいこう)十万にて 千里に糧を饋(おく)る。則(すなわち)内外の費…」(およそ戦争というものは、戦車千台、輸送車千台、兵10万もの大軍を動員して、千里の遠方に兵糧を送らなければ…)。

戦争には膨大な費用がかかる。負ければ当然、下手な勝ち方をすれば国の滅亡を招きかねない。戦いが長引けば兵士の士気は衰え、財政危機となれば、その隙に乗じて近隣の国から攻められないとも限らない。

ならば、どうするか?
そもそも「兵は凶器」である。
「故に兵は拙速(せっそく)を聞くも、いまだ巧の久しきを睹(み)ざるなり」(とにかく短期戦はいいが、長期戦の成功は知らない)。
つまり、戦争するなら短期決戦ですばやく片付ける。
長期戦が国に利益をもたらすことはない。戦争による損害を分からないと、戦争から利益を出すこともできない。
とにかく、早期収束を図ること。

「善くする者は果たして已(や)む。敢えてもって強をとらず」老子30章。真の戦い上手は、戦いの目的を果たせば直ちに矛をおさめて、むやみに勇名を馳せようとしない。

戦争で最も出費が多くなるのは、軍需物資の輸送。短期決戦ならその費用も抑えられる。
装備、軍需品は自国から運ぶとしても、糧秣(りょうまつ)(兵糧と軍馬用のまぐさ)や武器弾薬などの消耗品の調達に金がかかる。
国民所得の7割までが軍事費に持っていかれ、国家財政の6割が武器等の損失により失われる。すると、さらに税金を上げる事になる。

それを避けるため、
「故に智将は務めて敵に食(は)む」(優れた将軍は、糧秣を敵地で調達する)。敵地で調達する物資は、自分の国から運んだ場合の20倍の価値がある。輸送費削減のために現地調達をする。

ただし、敵地での略奪ではなく、交渉をして正等な値段で買い上げる。

ただし、戦いの結果に得た「戦利品(武器や兵糧)」は別。どんどん奪う。

戦いの原動力は「戦意」。その戦意の裏付けは戦利品である。
だから、例えば敵の戦車を10台奪って来た兵士には、その手柄を褒め、功績に見合う恩賞を与える。

「敵を殺すものは怒なり。敵の利を取るものは貨なり」(敵を殺そうと思うのは怒りの気持ち。敵の物を奪おうと思うのは恩賞がもらえるから)。

人事管理においても、その仕事の目的、自分の役割と意義、適正な評価が明確なことが大切。
「その旌旗(せいき)を更(か)え、車は雑(まじ)えてこれに乗り、卒(そつ)は善くしてこれを養う。これを敵に勝ちて強を益(ま)す」
この奪った戦車も軍旗を自分たちの物に付け替えて、味方の兵に乗り込ませ、次からの戦力とする。そして、捕虜にした敵の兵士は、危害を加えたりせず、むしろ手厚くもてなし、こちらの味方に引き入れ、兵士そのものも現地調達。これが、「勝ってさらに強くなる」という事。

「兵は勝つことを貴(たつと)び、久しきを貴ばず」(短期決戦をしろ、長期戦はするな)。
戦争は勝つことが目的であり、長く戦うことではない。早期終結を目指さなければならない。

参考)「呉子」が説く「将たるの条件」
1.理(管理)…部下をまとめて集団としての力を発揮させる
2.備(準備)…油断しない
3.果(決意)…死ぬ覚悟
4.戒(自戒)…勝っても緊張感を失わない
5.約(簡素化)…形式的手続きや規則を簡素化すること

勇気があることは前提。






◇ 1.始計篇

始計とは、はかりごとの始まり、つまり戦争に向かう心得や事前の準備。

そもそも、戦争は軽々しく始めるべきではない。平和か戦争の二者択一なら、迷わず平和を選ぶ。

「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」(戦争は国家の一大事で、国民の生死、国家の存亡にかかってくる。だから細心の注意を払って検討を重ねなければならない)

戦争は重大だからこそ事前に充分に戦争の法則性を研究すべき。
戦争を始めるか判断するための条件。
5つの基本事項で戦力を検討し、7つの条件を当てはめて優劣を判断する。
「故に、これを経(はか)るに五事を以ってし、これを校(くら)ぶるに、計を以ってして、その情を索(そと)む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法」(道・天・地・将・法の五つの事に関して、それが整っているかどうかで判断をする)

「道」は原則、方針。大義名分。
君主と国民の意思を一致させること。これがないと挙国一致の態勢、将兵を奮起させることが難しい。

「天」は情勢、タイミング。
天候・季節・時期などの時間的条件。
今がその(戦争する)時なのか?

「地」は環境的条件。
地の利、距離・険しさ・広さ・高さなど地理的条件。
地域や地形を考え、どの場所で事を起こすか?

「将」は大将の器量。仁義礼智信厳勇。君主は信頼に値する人物か。法令を守って賞罰などを公平に行っているか?

「法」は組織、規律、装備。軍制。軍の編成、職責分担、軍需物資の管理、適材適所への配置など。軍としての規律・団結力はどうか?これがないと、烏合の衆に終わる。

これら5項目について相手と自国を比べ、更に7つの条件を当てはめて5項目の条件が満たされているか判断し、戦争の見通しをつける。

1.君主はどちらが立派な政治(政治理念)を行っているか
2.将はどちらが有能か
3.天の時・地の利はどちらに有利か
4.法令はどちらがよく守られているか
5.軍隊はどちらが強いか
6.兵はどちらが訓練されているか
7.賞罰はどちらが厳正に行われているか

この基本の条件については事前判断であり、実際には「勢」を把握して7条件を補強する。「勢」とは、時々の状況を判断して臨機応変に対処すること。この臨機応変の判断には実践経験が必須。

原則は書から学べるが、臨機応変という応用は、経験を積まなければ身につかない。

そして、始計篇・準備段階でのしめくくりにあるのが、「兵は詭道なり」。
「兵」は「戦争」の事。「詭道」の「詭」は、偽り騙す。臨機応変、千変万化して相手を撹乱する事。そして、短期で相手を屈服させること。

「兵は詭道なり。故に能なるも不能を示し、用なるも不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれを備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓(みだ)し、卑にしてこれを驕(おご)らせ、佚(いつ)にしてこれを労し、親にしてこれを離す。その無備を攻め、その不意に出ず」(戦とは敵をあざむく事。できるのにできないふりをし、必要でも不要と見せかける。遠ざかると見せかけて近づき、近づくと見せかけて遠ざかる。有利だと思わせて誘い出し、混乱させて突き崩す。充実している敵には退いて備えを固め、強敵とは戦いを避ける。挑発し掻き乱しといて消耗させ、低姿勢に出て油断を誘う。休養をとっている者は事を構えて奔命(忙しく活動させる)に疲れさせ、団結している敵には分断を謀る。手薄・無防備なところにつけこみ、意表をつく。」

これらが戦術の要諦。その運用は状況に応じる。

敵に勝つためには、正攻法だけではダメで、敵を欺かなければならない。
「欺く」とは、実際と違う様に見せかけて相手に実態を悟らせぬようにして判断を誤らせるとか、相手の裏をかき意表をつくとか、相手のペースを乱してこちらのペースに巻き込む等、あらゆる奇策が全部含まれる。
そのようなさまざまな工夫をして敵の弱点を作りだし、その弱点をつくことが「詭道」。

現実におかれた敵味方の実態に対して、「詭」によって条件を作り替える「権(臨機応変の対応策)」を説く。

ただ、やましい事を通すために騙し続けるのではなく、守るべきものを守るため、勝ち抜くために騙す。

そういう状況の作り替え、転換があるから、「兵家の勝つは、先づ 伝ふ可からず」(言葉にできない)ということになる。
勝利の見通しが立つのは、勝つための条件が整っているからである。見通しが立たないのは条件が整っていないということ。
勝敗は戦う前に明らかになる。
勝利の見通しも無しに戦争を始めてはいけない。

見通しは、経験値が上がれば上がるほど立てられるようになる。